サックスとギター2本という、ほとんど前例を見ない編成でのアルバムだ。
リーダーの土岐英史(1950生 as,ss)は鈴木勲や日野皓正のグループで腕を磨き、1975に初リーダーアルバムを発表して以来30枚を超えるアルバムを制作している。また、1977~2011は山下達郎のツアーメンバーとしても活躍している。
今回は気心の知れた荻原亮と井上銘という2人のギタリストを呼び、「ギタリスト同士が遊んでいる中に混ぜてもらう」というイメージで制作した。事実2人は何を演るのかも知らないままスタジオに集合し、土岐が示した曲をどちらがテーマを弾くかジャンケンで決めてセッションを始めたという。
これが実に素晴らしい演奏を引き出した。2本のギターが交錯しながら自由に曲を形作っていき、そこに土岐のサックスが良い間合いで控えめに加わるのだが、どの曲も3人が楽しんでいるのがひしひしと伝わってくる。
そのため、このセッションにベースもドラムもいない事に何の不足感も感じない。
ライナーノーツのタイトルが「管理でなく統率、エンジンは愛情」とあるが、まさにこのアルバムのリーダー土岐のスタンスを表している。
また、ライナーを書いている平野氏が2018に創立したこのDays of Delightというレーベルは、日本のジャズのカッコよさを若い世代に届けたいというポリシーで意欲的な作品に取り組んでおり、音質もジャケットもハイレベルで要注目。
午後のハーブティーの香りを楽しみながら。
(2020録音)
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